安全性について

ベネフィクスを使用される患者さんとそのご家族の方に、知っておいていただきたいことをQ&Aとしてまとめました。

監修医師
産業医科大学 名誉教授 白幡 聰 先生
Q1「プラズマ/アルブミンフリー製法」とは何ですか?
A1

製剤を作る工程で血漿(プラズマ)やアルブミンを一切使用しない、リコンビナント製剤の製法の中でも進歩した技術です。

プラズマ/アルブミンフリー製法とは、ヒトや動物の血漿や、血漿から作られるアルブミンを一切使用せずにリコンビナント製剤を製造する方法です。
これまでの凝固因子製剤は献血による血漿を原料に作られていました。また、リコンビナント製剤であっても製造の過程でアルブミンを使用しているものもありました。
ベネフィクスの有効成分(第Ⅸ因子)を作るチャイニーズハムスター卵巣( CHO )細胞は無血清培地で培養されています。また、アルブミンを使用せず、血漿成分を一切含まない製剤として製造されています。
こうした特徴から、ベネフィクスは血液を介する感染症の心配のない血友病B治療薬として、米国血友病財団の医学・科学諮問会議(※1)や英国血液学標準化委員会(※2)から使用を推奨されています。

※1 National Hemophilia Foundation’s Medical and Scientific Advisory Council
※2 British Committee for Standards in Haematology(BSCH)

Q2血液を介して感染するウイルスにはどのようなものがありますか?
A2

HIVウイルス、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、パルボウイルスなどがあります。

1980年代、ヒト血漿から作られる製剤でHIV、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルスなどの病原体に感染する危険があることが明らかになりました。それ以来、原料となる血液の検査方法の改善や、ウイルスの不活化処理技術の改良など、安全性を向上させるためのさまざまな方法が導入されてきました。
しかし、輸血を介して感染する可能性のある病気(変異型クロイツフェルト・ヤコブ病など)も存在しています。
さらに、現代の技術では完全には不活化あるいは除去できない病原体の存在も明らかになっていることなどから、血漿由来の製剤を介して感染する危険性をなくすことはできないと考えられています。

血液を介して感染するウイルス

ウイルス名 病名
ヒト免疫不全ウイルス(HIV)
B型肝炎ウイルス
C型肝炎ウイルス
パルボウイルスB19
ヒト免疫不全症候群(AIDS)
B型肝炎
C型肝炎
伝染性紅斑

[変異型クロイツフェルト・ヤコブ病 (variant Creutzfeldt-Jakob disease:vCJD)]

脳組織にスポンジ状の変化を引き起こす病気で、プリオンと呼ばれる病原タンパク質が脳に侵入することで発症するといわれています。輸血を介して感染する可能性があると考えられています。

Q3ベネフィクスはどのように作られていますか?
A3

ベネフィクスは血液由来の成分を使用しない、4つの主要なステップを経て製造されています。
ベネフィクスは以下のステップを経て製造されています。

  • 1)無血清培地でのCHO細胞培養ヒトの第Ⅸ因子の遺伝子を組み込んだチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞を、ヒトや動物の血液成分を含まない、無血清培地で培養しています。
  • 2)クロマトグラフィーによる精製第Ⅸ因子を4種類のクロマトグラフィーを用いて精製します。クロマトグラフィーによる精製でよく用いられる、動物の抗体は使用していません。
  • 3)ナノフィルターによる不純物の除去ナノフィルターでのろ過を行うことで、第Ⅸ因子以外のタンパクや不純物を排除します。
  • 4)アルブミンを使わない製剤化長期間の保存ができるように、第Ⅸ因子をフリーズドライ(凍結乾燥)法で製剤にしています。リコンビナント製剤の中には、安定化剤として血漿由来のアルブミンを加えたものがありますが、べネフィクスはアルブミンを使用していません。
ベネフィクスの製造工程 4つのステップ

精製

混合物から不純物を取り除き、純度の高いものにすることをいいます。

抗体

生物は自己と非自己(異物)を区別し、異物が体内に侵入してきたときにはそれをさまざまな方法で無力化し、排除する働き(免疫作用)を持っています。
抗体は免疫作用の一つとして体内で作られる物質で、ある異物に対して強い力で結合することで、その異物の機能を失わせたり、白血球などによる排除を促進します。

Q4CHO細胞とはどのようなものですか?
A4

チャイニーズハムスターの卵巣細胞のことで、リコンビナント製剤を作るために用いられている、安全な細胞です。
リコンビナント技術を用いて薬剤を作るには、目的とする医薬品を作ってもらう細胞が必要です。ベネフィクスではその細胞としてチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞を用いています。
CHO細胞は1968年から医薬品の製造に使用されている細胞で、その安全性は確かめられており、無血清培地でも増殖することができるため、さまざまなリコンビナント製剤の製造に用いられています。
ベネフィクスの製造に使用されているCHO細胞は保存、使用、生産の各製造段階において、ウイルスなどに感染していないことを確認しています。

無血清培地

細胞の培養に用いる培地(細胞のための栄養成分や、環境を安定させるための薬剤を含む溶液)に、ヒトや動物の血清が含まれていないものを無血清培地と呼びます。
一般に、細胞を培養する培地には、ウシ胎児血清などを添加します。しかし、動物の血液を介して感染する病原体の存在がわかってから、医薬品製造においては無血清培地が広く使われるようになりました。

Q5ベネフィクスはどのように精製されていますか?
A5

ベネフィクスは4つのクロマトグラフィーと、3つのフィルターにより高純度に精製されています。

ベネフィクスは不純物を除くために、4つのクロマトグラフィーと3つのフィルターを用いて精製されています。
一般に、ホルモンやインターフェロンなどの微量成分を精製する際には、抗体を使って必要な物質だけを精製する方法(抗体アフィニティー精製法)が用いられますが、動物由来の感染リスクの観点から、ベネフィクスの精製工程では使用していません。

ベネフィクスの製造工程 精製

クロマトグラフィー

クロマトグラフィー ( Chromatography) とは物質を精製する技術で、物質の大きさや性質(吸着力・電荷・疎水性)などの差を利用して、成分ごとに分離する方法です。
ベネフィクスの精製は、4種のクロマトグラフィー精製を行うことで、純度の高い第Ⅸ因子を精製しています。

Q6ナノフィルターとは何ですか?
A6

ウイルスを通さないほどの目の細かいフィルターです。

ウイルスを通さないほどの目の細かいフィルターをナノフィルターと呼びます。
ベネフィクスの精製においては、20ナノメートル(nano-meter:nm)というごく小さな孔径(フィルターの網目の大きさ)のナノフィルターを用い、徹底したろ過を行っています。
*ナノとは「10億分の1」の意味です。

長さの単位

山西弘一ほか:標準微生物学(第8版) 医学書院:133,452,481,520,526(2002)より抜粋・作表

Q7「リコンビナント」とは何ですか?
A7

遺伝子組換え技術を用いていることを意味しており、この技術は現在、薬剤の製造などに広く用いられています。

リコンビナント( recombinant)とは「(遺伝子)組換え型の」という意味で、遺伝子組換え技術で作られた製剤は「リコンビナント製剤」と呼ばれています。
生物は自分の体を形作る細胞に、生きていく上で必要なさまざまな物質を作らせますが、その設計図となるのが遺伝子です。遺伝子組換え技術とは、ある生物の細胞に外から遺伝子を組み込むことで、新たな性質を持たせたり、必要とする物質を大量に産生させる技術のことです。
1982年、大腸菌にヒトのインスリン遺伝子を組み込んで作られたリコンビナントインスリン製剤を皮切りに、リコンビナント製剤はさまざまな病気の治療に使用されています。

日本で使用されているリコンビナント製剤の例

製剤分類 主な適応疾患
ヒトインスリン
インターフェロンα
ヒト成長ホルモン
インターロイキン-2
第Ⅷ因子
bFGF(塩基性線維芽細胞増殖因子)
卵胞刺激ホルモン
第Ⅸ因子(ベネフィクス)
糖尿病
がん、肝炎など
低身長症など
がん
血友病A
皮膚潰瘍など
不妊症
血友病B
Q8遺伝子組換え食品とリコンビナント製剤ではなにが違うのですか?
A8

リコンビナント製剤は作られた成分から必要な成分だけを抽出しています。

遺伝子組換え(リコンビナント)とは、ある生物の細胞に外から遺伝子を組み込むことで、新しい性質を持たせたり、必要とする物質を大量に産生させる技術です。
例えば、ある植物に「病気に強くなる」遺伝子を組み込むことで、農薬を使わなくても病気にかかりにくい作物を栽培できるようになります。こうして作られた作物は「遺伝子組換え食品」と呼ばれています。この場合、その作物を丸ごと食べることになりますが、「植物が病気に強くなる」遺伝子が組み込まれた作物が、それを食べた人にとって安全かどうかはいまだ明らかではありません。また、組み込まれた遺伝子が、目的とする成分以外のものを生み出す可能性もあります。
一方、リコンビナント製剤は、有効成分を作るための遺伝子を細胞に組み込んで生産される、必要な成分だけを抽出したものです。たとえば、ベネフィクスはヒトの第Ⅸ因子遺伝子を組み込まれたCHO細胞が作り出す第Ⅸ因子のみを抽出して製剤にしています。
そのため、リコンビナント製剤を使用しても、組み込まれた遺伝子やCHO細胞の成分が体に入ることはありません。

遺伝子組換え食品とリコンビナント製剤の違い

遺伝子組換え食品とリコンビナント製剤の違い
Q9ベネフィクスの品質はどのように管理されていますか?
A9

ベネフィクスは厳しい検査基準に基づき、製剤化されるまでに150以上の検査を行い、品質を管理しています。

ベネフィクスは複数の段階を経て製造されています。そして、その段階ごとに厳しい基準に基づいたさまざまな検査が行われています。
製剤の完成までに、検査プログラムに従い150以上の品質検査が行われ、製剤の純度や活性について厳しく調べられています。
こうした製造工程は米食品医薬品局(FDA)、欧州医薬品庁(EMEA)などの認可を受けています。

Q10ベネフィクスはどこで作られていますか?
A10

ベネフィクスはファイザー海外工場で厳重な管理のもとで生産されています。

ベネフィクスはファイザー海外工場で製造されています。
この工場は1997年から一貫して安定したベネフィクスの生産を行っています。
製造工程は専任のスタッフと包括的な管理計画によって厳重に管理されており、最新鋭の設備による安定したベネフィクスの生産・供給が可能です。